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2012年10月27日土曜日

DAW/DTM用のモニタースピーカーとオーディオI/Fを選ぶ前に






 初めてモニタースピーカーを買う方にとって、どのようにスピーカを選択するのか、というのは悩みの種です。結論から言ってしまえば、予算をいくらにするのか、というところから攻めるのが一番シンプルな考え方でしょう。
 
 しかし、良い音質を求めると、際限がないように思えるのがオーディオの世界。実は、そんなに迷うことはなかったりしますが、どのような判断基準があれば良いのか、今回はそれについて考えてみます。




 そもそも、音楽再生における音像の良し悪しは、画像(映像)のそれに比べて比較するのが厄介です。近年、新製品が発表されるのと同じくして、質が高められるのは間違いなく「映像」です。つまり、新たなPC,MacやTVといった製品の品質面で、向かう先には「高画質化」はあっても、「高音質化」はあまり期待できない、ということです。

 高音質化が期待できない理由として挙げられるのは、映像製品の縮小化、コンパクト化の傾向が強く、満足できるスピーカーユニットを納める筐体のスペースはなく、より良い音で音楽を聴くには、別途、スピーカーを購入するというのが常識になってしまっている、ことでしょう。よい環境を得るには、コストがかかるということです。

 一方の映像製品は、一度、高画質化した映像に慣れてしまうと、それ以前の製品に戻ると違和感を強く感じてしまいます。AppleもRetinaディスプレイを発表しましたが、これを使えば以前の画面は、「ボケて」見えるでしょう。私もiPhone3Gから、4Sに変えましたが3Gの画面を見ると大分ぼやけて見えます。古びた定食屋にあるブラウン管TVを見ても同じ感想を持つのではないでしょうか。

 そう考えると、映像製品は高画質化に一方的に進んでいくのに対し、オーディオ製品の要である「スピーカー」については、個人の「選択」に委ねられ、映像製品の購買とは、少し離れた位置付けです。とは言っても、それだけ、自由度があり、選択肢も多いという事になります。

 私も音響環境が著しく変化してきました。初めてのオーディオインターフェースは、YAMAHA-O1XというFirewire対応の製品で、モニターアウトプットもついていたので、それをアンプに繋ぎ、スピーカーで鳴らす、ということを大学時代に狭い部屋でやっていたような気がします。

 その後は、YAMAHA MSP5を購入し、ProTools導入時に、AVID HD OMNIを購入しましたが、試聴環境はかなり改善されました。私の経験としては、オーディオインターフェースの品質とモニターの品質がマッチする当たりで、上手く予算が組めれば、導入時には問題ないと思います。

 単純にお金をかければ良い、という問題でもありません。投資をしたならば回収が必要だからです。シンプルに趣味だけなら、良いかもしれませんが、自分の稼ぎに応じてレベルアップしたい方は、やはりある程度、計画性があったほうが良いと思います。


 「より良い音環境で試聴する目的が何か」ということは重要です。簡単に挙げるとすれば、
 1.録音・Mix作業を行う
 2.作品を試聴する
の2つでしょう。

 前者と後者は、密接に繋がっていると思います。エンジニア志望であれば、圧縮された音源ではなく、CD等の比較的高音質の作品を聴き、かつ、それを録音やMixに活かしたいと考えるでしょう。

 一般のユーザーであれば、シンプルに2.の目的だけでしょう。しかし、DAWを始める人は、少なくとも1.も重要になってきますよね。
 
 では、「より良い環境で音を聴く」というのは、どういう事なのでしょうか。

 1.音源の品質(フォーマット)は、音像を変化させる。
 2.音声信号は、オーディオ機器によって変化する。
 3.音は、物理現象なので、再生環境(部屋の形状)により、大きく変化する。
 
 大きくこの3つに分類して考えてみたいと思います。


 1.音源の品質(フォーマット)は、音像を変化させる。

 「録音」というインプットではなく、「再生」というアウトプットから考えてみたいと思います。再生する場合には、当然、音源が必要です。これが出発点ですね。アナログであれば、レコード、テープがありますし、デジタル隆盛の現在では、CD、SACD、AAC、MP3などの圧縮音源、AIFF、Wave形式のオーディオファイルもあります。

 デジタル音源における品質の違いは、明らかに聴き取れます。もし、PC/Macにスピーカーをつないでいれば、当ブログのWorksで、SoundCloudとMixCloudの音源を聴き比べてみてください。マスター音源である96kHz/24bitを、SoundCloudはAAC128kbps、MixCloudはMP3で320kpbsでアップロードしています。SoundCloudは、無料ユーザの場合は、音質を下げられるそうなので、64kbpsくらいと考えています。

 もし、この2つの音源の違いを、皆さんのスピーカーで聴き取れるなら、音像が把握しやすいスピーカーであると考えられます。ちなみに、私は、TIMEDOMAIN LIGHTという卵型のスピーカーを利用しています。MacBookProからライン接続ですが、音像がハッキリしているのが売りです(サイズからして低音は期待できないのですが…)。ちなみに、大学時代に使っていたオーディオ機器では、その接続の知識もなかったせいか、全く違いが分かりませんでした。

TIMEDOMAIN LIGHT(HPより転載)
 
 
 2.音声信号は、オーディオ機器によって変化する。

 当然ですが、電気信号なので、機器の影響を受けます。私は、オーディオのエンジニアではないのでそれほど正確なことが言えないかもしれません。

 基本的には、音源データを読み込む機器から、増幅回路であるアンプ、そして出音であるスピーカーにいたるまで、電源、ケーブル、回路、デジタルとアナログのコンバーターなど、あらゆるモノに影響を受ける運命にあります。時としては、外部からの電磁波も影響を及ぼすでしょう。


 CDなどの音源再生に限って言えば、低コストでなるべく品質を保つには、やはりデジタルに頼らざるを得ません。例えば、Macならば、ほとんどの機種で光デジタル出力が付いています。S/PDIFという規格が一般的です。この場合、Macとオーディオインターフェースを光デジタルで接続すれば、再生からアンプ(AI/F)までの外部干渉の影響は、限りなく低くなるでしょう。DAW上の再生であれば、USB、Firewireとの接続になります。

 そして、オーディオインターフェースとモニタースピーカをつなぐ際も、2〜3m以上で、外部干渉の影響が違います。ケーブルには、バランスとアンバランスの2つの種類があり、長い場合は、バランス、それほど長くならない場合は、アンバランスでも干渉を受けにくい(7m程が限度)、と私は認識しています。ケーブルについては、ピンキリで、高額なものもあるようですが、基本的に、CANAREなど、安価なものでも信頼性はあると思います。

 オーディオインターフェースでは、デジタルとアナログを行き来するコンバーターの品質が何と言っても重要でしょう。個人的には、ドイツのRME、APOGEEがおすすめです。私は、AVIDとRME、APOGEEと悩みましたが、結局AVIDにしました。現在では、MacならばThunderbolt接続のインターフェースが発表されているので、こちらの方が、コスト的に安上がりでよいです。AVIDは、品質は高いがと価格が異常に高い。


 最後に、モニタースピーカーです。モニターという位なので、原音を忠実に生成するということは言うまでもありません。これも出力やエンクロージャーの素材、形状、スピーカーユニットで大きな違いがあります。これを選ぶのは、厄介ですね。何と言っても家の環境に適応したスピーカーがどれくらいの出力が必要なのか、という事になってきます。

 音は、相対的なもので、Aの信号を10ワットで出力するのか、100ワットで出力するのかで、「音量の差」は断然違います。「音量の差」を表現できるということは、必然的に細かい調整(表現)が可能です(ダイナミクスの微調整ができるDAW・AudioI/Fであれば)。出力が高いことは、明らかにメリットがあります。これは、音像や音質とは異なりますが、少なくとも、音量については単純にそう言えます。

 では、100ワット出力のスピーカーを6畳一間の防音も施していない部屋に置いて意味があるのか、というところです。まず、音量が上げられません。音質は、良いかもしれませんが、出力のメリットが全く消えてしまいます。そういった点から、再生環境がどの程度なのか、ということで、モニタースピーカーはある程度絞れてきます。YAMAHA MSP5でもかなりの出力(60W)で、10畳くらいでもまぁいけるでしょう。

 購入前には、どれくらいの音量まで再生可能なのか、ということも考える必要があります。昼間に音量を上げて自分で部屋の外に出てみたりして、チェックしてみたほうが良いと思いますし、お店の方も相談に乗りやすいと思います。

100W以上の出力を誇るGENERIC社製スピーカー

 技術的なことを、詳しく、そして、正確に述べることは、難しいですね。しかし、この再生機器→アンプ(オーディオインターフェース)※→スピーカーという一連の流れでボトルネックを作らないことが重要です。

 ※ホームレコーディングを前提に考えています。


 3.音は物理現象なので、再生環境(部屋の形状)により、大きく変化する。


 最後に、環境という点ではもっとも重要な、再生環境です。音は、コンクリートや木材によって、遮られます。外に漏れ出されないという点においては、遮蔽できるというのは重要ですが、もれない音は、今度は部屋の中で、反射してしまいます。この音の反響をいかにコントロールするかで、そのスピーカーの本来の性能を享受できるかが左右されます。

 スピーカーから出た音は、四方八方の壁に当たり、反射音が私たちの耳に届きます。結局、この反射音がスピーカーの再生音と干渉し、音像がにごってしまうことがあります。こればかりは、プロに任せるしかないのでしょうが、吸音材を用いて気持ち程度、改善することができるでしょう。

 例えば、このブログのタイトルにある画像で、モニターが映っていますが、後ろは、木材です。ここは周囲に家が少ないので、音量は気にしなくて良いのですが、反響はそうはいかない。よって、写真は悪い例です。後ろに吸音材を入れると、若干マシになります。狭い部屋なら尚更そうでしょう。
 
 反響も素材によって異なります。部屋壁の多くは、コンクリートか木材でしょう。コンクリートであれば、反射音が多くなるので、吸音材等で吸音処理する必要があると思います。木材の場合は、高音が残りやすいのでそこさえ注意すれば、比較的良いのでは。そのかわり、中低音はダダ漏れです(木造に住むと上の階の足音が聞こえますよね)。スピーカーのエンクロージャーで発生する共振を抑えるために、インシュレーターを用いたりするのも有効だと思います。

 日本で大音量は物理的にも社会的にも難しいですね。なので、その点も踏まえて、スピーカーを選ぶのが良いと思います。


 1.音源の品質(フォーマット)は、音像を変化させる。
2.音声信号は、オーディオ機器によって変化する。
 3.音は、物理現象なので、再生環境(部屋の形状)により、大きく変化する。

 以上の3点を中心に解説してきました。今回は、良い音で聴く、という音源、オーディオ機器、再生環境について、コンパクトにまとめてみました。これらのポイントは、分厚い本が書けるくらいの内容なので、突き詰めると面白いかもしれません。

 1〜3を踏まえた上で、バランスを取ることが重要だと思います。どれかひとつだけ、以上に効果なものを買っても、他の製品がボトルネックになる可能性があります。ギターで言えば、FenderのMasterBuilder使っているのに、アンプが1万円の練習用では、スペックが出ません。逆に、入門用ギターに、TwoRock買って使っても(そんな奴いるのか)TwoRockの性能を引き出すことは出来ないと思います。

 単純に、音質が良い、ということを求めるより、今の状況(予算と目的)を考えて選べば失敗しないと思いますし、投資コストは安くすみます。上を見ればキリがありませんから、音楽の実力を鍛え、良い作品に沢山触れたほうが良いでしょう。

 これらのポイントを踏まえた上で、オーディオ機器やスピーカーを選んでみると良いと思います。ここでは商品を紹介するのが目的ではないので、SoundHouseやその他サイトで調べてみると良いと思います。


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