Phase(位相)のトラブル
先日、女性のmonologue(語り)が録音されたステレオ・ファイルを、FMトランスミッターを介して再生したい、という相談を受けました。その音源が、現地のテスト環境で、音が出ないというトラブルに見舞われていたようです。ステレオファイルを確認したところ、L.Rで逆相になっていました。解決策は、何ということもなく、Phase Invertをかけて、直しました。結局、モノラルトラックを採用することになりました。
録音時に、XLRピン出力のモノラルマイクを、ステレオレコーダのピンジャックに入れたそうで、それで、Rが逆相状態で、データが作成されたようです。(XLRコネクタの記事で、逆相を作ってノイズを消す、ということを勉強しましたね。)
そんなわけで、今回は、位相/Phaseについて、調べてみました。
![]() |
Wiki英語版より転載・加筆 |
1.波長(λ)、波の繰り返し一つ分の長さ
2.振幅/amplitude(A)、波の高さ
3.周波数/振動数/frequency(f )、媒質が1秒間に往復する回数(Hz=1/s)
4.周期/time(T)1往復に要する時間
話はそれますが、デジタルコンバートする際のサンプリングレートで、インターフェースで192KHzとか、CDなら44.1KHzとかありますが、これは1秒間にどれくらいのデジタルデータ(サンプル)を作るか、ということです。数値が高ければ、なめらかな波形が作成されます。決して、音響のf特性的な意味での、192KHzではありません。44.1KHzの際の1サンプルの長さは、約0.023ms(=1/441000)になります。24Bit、16Bitなどのビットレートは、大きい数値であるほど、振幅(A)方向の精度が高まります。
![]() |
Wiki英語 /sampling rateより |
<Phase Shift 位相のズレを数学で考える>
レコーディングやミックスで問題視される位相のズレとはなにか、ということについてです。ちょっと、数学で考えてみましょう。
レコーディングやミックスで問題視される位相のズレとはなにか、ということについてです。ちょっと、数学で考えてみましょう。
図に戻って、赤と青の2つの波があり、基本的には、同じ周期、振幅の波形です。唯一違うのは、θ分だけずれています。式で言うとΦ(ファイ)の数値がこのズレを握っています。
式中のΦは、ずれた分の角度を表しています。波形状では、θ分のズレとして表記されます。これは、気にしないで、とにかく、同一波形が時間軸上でズレている、ということを理解するのが重要です。
<音楽制作における位相のズレ>
前段から分かるように、位相のズレとは、同等な、2つ以上の波形の時間軸がずれる現象をいいます。これは、ステレオ再生においては、定位が安定しなくなることを意味します。音像という言葉で言うなら、ぼやけた感じに鳴るでしょう。
同時管軸、同波形で問題になりやすいのは、ドラムのマルチトラックレコーディングでしょう。音かぶり、ルームマイクなど、マルチトラックの処理や、時間軸に影響があるプラグイン処理には要注意です。
<位相をモニタリングするためのプラグイン>
この位相をモニタリングするツールがあります。ProTools 9までなら、BF Essential Correlation Meterがあります。Correlationは相関という意味です。
冒頭のMonologueのステレオファイルの位相関係です。
上が-1.0で位相が完全におかしいです。下は、逆相を修正した後の位相で、+1.0で正常と言えます。
では、サンプルベースで比較してみます。ステレオ音源の片方を10サンプル、20サンプルづつずらしました。DIGIRACK PHASESCOPEで確認してみます。画面下のPhaseバーに注目です。
![]() |
10サンプルのズレ |
![]() |
20サンプルのズレ |
20サンプルもずれるとサウンドも完全に、定位がずれます。10サンプルでも違いは分かります。一方、BF Essential Correlation Meterで、30サンプル時くらいにならないと、針が触れません。
![]() |
30サンプルのズレで反応 |
0 件のコメント:
コメントを投稿