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2012年11月4日日曜日

Phase(位相)のトラブル /位相のズレと位相の基本知識/Phaseモニター用プラグイン





 Phase(位相)のトラブル

 先日、女性のmonologue(語り)が録音されたステレオ・ファイルを、FMトランスミッターを介して再生したい、という相談を受けました。その音源が、現地のテスト環境で、音が出ないというトラブルに見舞われていたようです。ステレオファイルを確認したところ、L.Rで逆相になっていました。解決策は、何ということもなく、Phase Invertをかけて、直しました。結局、モノラルトラックを採用することになりました。


 録音時に、XLRピン出力のモノラルマイクを、ステレオレコーダのピンジャックに入れたそうで、それで、Rが逆相状態で、データが作成されたようです。(XLRコネクタの記事で、逆相を作ってノイズを消す、ということを勉強しましたね。)
 そんなわけで、今回は、位相/Phaseについて、調べてみました。


 そもそも、「位相」という言葉は、物理用語ですが、音楽制作でも重要な項目です。まずは下記の図の赤い波形に注目してみてください。

Wiki英語版より転載・加筆

1.波長(λ)、波の繰り返し一つ分の長さ

2.振幅/amplitude(A)、波の高さ

3.周波数/振動数/frequency(f )、媒質が1秒間に往復する回数(Hz=1/s)

4.周期/time(T)1往復に要する時間

図の赤い波形を見て頂くと、λの波長は、波の繰り返し1セットです。例えば、この波長の周期が、1秒であれば、周波数は、1Hz=1/1(s)になります。1/2秒であれば、2Hz=1/(1/2)ということです。振幅(A)については、そのまま波形の強弱を表します。簡単に言えば、Volumeですね。


 話はそれますが、デジタルコンバートする際のサンプリングレートで、インターフェースで192KHzとか、CDなら44.1KHzとかありますが、これは1秒間にどれくらいのデジタルデータ(サンプル)を作るか、ということです。数値が高ければ、なめらかな波形が作成されます。決して、音響のf特性的な意味での、192KHzではありません。44.1KHzの際の1サンプルの長さは、約0.023ms(=1/441000)になります。24Bit、16Bitなどのビットレートは、大きい数値であるほど、振幅(A)方向の精度が高まります。

Wiki英語 /sampling rateより




<Phase Shift 位相のズレを数学で考える>

 レコーディングやミックスで問題視される位相のズレとはなにか、ということについてです。ちょっと、数学で考えてみましょう。

 図に戻って、赤と青の2つの波があり、基本的には、同じ周期、振幅の波形です。唯一違うのは、θ分だけずれています。式で言うとΦ(ファイ)の数値がこのズレを握っています。 




 式中のΦは、ずれた分の角度を表しています。波形状では、θ分のズレとして表記されます。これは、気にしないで、とにかく、同一波形が時間軸上でズレている、ということを理解するのが重要です。


<音楽制作における位相のズレ>

 前段から分かるように、位相のズレとは、同等な、2つ以上の波形の時間軸がずれる現象をいいます。これは、ステレオ再生においては、定位が安定しなくなることを意味します。音像という言葉で言うなら、ぼやけた感じに鳴るでしょう。

 同時管軸、同波形で問題になりやすいのは、ドラムのマルチトラックレコーディングでしょう。音かぶり、ルームマイクなど、マルチトラックの処理や、時間軸に影響があるプラグイン処理には要注意です。

<位相をモニタリングするためのプラグイン>
 この位相をモニタリングするツールがあります。ProTools 9までなら、BF Essential Correlation Meterがあります。Correlationは相関という意味です。

 冒頭のMonologueのステレオファイルの位相関係です。




 上が-1.0で位相が完全におかしいです。下は、逆相を修正した後の位相で、+1.0で正常と言えます。


 では、サンプルベースで比較してみます。ステレオ音源の片方を10サンプル、20サンプルづつずらしました。DIGIRACK PHASESCOPEで確認してみます。画面下のPhaseバーに注目です。

10サンプルのズレ

20サンプルのズレ
 20サンプルもずれるとサウンドも完全に、定位がずれます。10サンプルでも違いは分かります。一方、BF Essential Correlation Meterで、30サンプル時くらいにならないと、針が触れません。
30サンプルのズレで反応


 FluxのStereoToolもあります。Phaseバーが下の方にあります。

 


 如何でしたか。今回は、数学的な理論と、DAW上での数十サンプルの違いが、プラグイン上で、どのように表示されるのか、というところまで、調べてみました。

 位相のズレは、同一波形であれば、プラグイン、システム遅延により発生する可能性があります。振幅の差がなければないほど、顕著に現れるでしょう。

 Stereoのトラック上では、最終的なトラックバウンスやミックスダウンする際には、注意すべき点のひとつですね。トラックごとにしっかり管理したいですね。

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