録音とミックスにおけるダイナミクスの捉え方の違いについての考察。
録音時はいかにノイズを拾わずに良い演奏を収録するか、に焦点があてられる。この場合は、S/Nでよく言及される。ノイズ(N)に対して、音楽信号(S)の比が高ければ高いほど、ノイズが低い状態である。ノイズリダクションなど、pluginで処理できるとは言え、これはのちのミックス作業に大きく影響する。S/Nを左右するのは、機材や電源環境によるところが大きいが本稿では言及しない。
録音時のダイナミクスについては、どのようなサウンドの仕上がりを志向するのかによって、強弱の狙いが表れる。例えば、アタックの強いギターカッティング(エレキでもアコースティックでも)の場合は、通常、音量は「強」の状態にあるし、コントロールされたVocalの音量調整であれば、「弱」から「強」への広いレンジで、ダイナミクスが生まれる。
録音時の注意事項としては、音量を上げすぎるあまり、サウンドがクリップ(ゲインが許容量をこえること)しないようにすることが大切である。そのために、コンプレッサー、ノイズゲート、リミッターを活用し、目的を達成されたい。
このように、録音時に要求されるダイナミクスは、あくまでもノイズに対して、どれくらい音量が稼げるのか、ということに焦点が当てられる。
一方で、ミックス時は、「サウンド作り」、「音量調整」が主な焦点である。この作業時のトラックの音圧の実効値(RMS)に関して言えば、-20~-15dB前後のトラックでも問題ない。
ここで重要なのは、サウンドの色付けのために、コンプレッサーやEQなどを十分に効かせるだけの音量的余裕を持つことである。これは、録音時の「ノイズ」がなく、ポップノイズに代表される「クラックノイズ」などがない状態のトラックを作ることを意味する。
すなわち、波形的に見ても、急激なとんがり帽子から始まり、芋虫のように細いサウンドは、修正される必要がある。これは、リミッターやAudioSuite処理、波形編集等で行う。
最終的に、MixDownのRMSを-10〜-8dBを目指すわけであるが、録音時は0dBを目指し、ミックス時は、AudioSuiteのGainで、RMS-20dBくらいまで落とし、そこから、ダイナミクス系のpluginで音量を上げていくだけで、かなりクオリティが上がる。(この場合は、pluginがサウンドに大きく影響を与えることになる)
以上のことから、ミックス作業に入る前に、録音した素材を、RMSとPeakを見ながら調整することが重要だ。
録音後のトラックのRMSとPEAKについての考察に続く。
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