バランス構造
ほとんど全てのローインピーダンスマイク、アウトボード機器やミキサーと同様に、バランスケーブルを使用しています。アンバランスケーブルの長さの限界は、月や星の位置に依存しますが、約25フィート(7.6m)である一方、ローインピーダンスのバランスケーブルは、ノイズや電気干渉が加わることなく、そして、オーディオ信号が劣化することなく、1000フィート(300m)ぐらいまで、長くすることが可能です。
位相干渉について言えば、もし、2つの波形が、位相が180度に逆であれば、電気的に互いに打ち消し合います。2つの波形が、正確な重なる位相であれば、合計され、振幅は、2倍になります。これらの理論は、バランス構造の設計に重要な役割を果たしています。
ローインピーダンスのバランス・マイクのケーブル(XLRケーブル)は、Hot Leadと網状の線材(シールド)だけを用いるアンバランス構造とは異なり、3つの導電体を利用しています。その3つのうち、2つは、Hot Leadとして使われ、残り1つは、グランドに接続されています。シールドされた2つのケーブルは、同じ構造ですので、これらはHot Lead、そして、シールドはグランドに接続されます。
ここで画像を見てみましょう。ケーブルメーカーのVanDelHulからの転載です。2つのHotLeadは、正確に同じ信号を伝送します。唯一違う点は、1つのLeadは、もう一方のLead、マイクから逆相の信号を伝送していることです。これは非常に重要です。この事実を知っていることは、バランス構造を理解することに役立ちます。
もし、ケーブルをカットして、これら2つのHotLeadを接続すれば、ソースからは音楽信号は全く聞こえなくなります。というのも、2つのHotLeadは、逆相だからなのです。2つの波形は、互いに打ち消し合います。おそらく聞こえるものは、拾ってしまうノイズと電気的な干渉のみでしょう。実際に、2つのHotLeadは、同じ干渉を受けているので、ノイズは、振幅が通常のレベルから2倍になります(完璧に同じ位相であれば)。HotLeadは、意図的にケーブルを通して、ねじ曲げられているので、両方とも同じ干渉にさらされています。
どの3点コネクターでも、バランスケーブルが使われています。2つのHotLeadとグランド接続の場所まで距離があっても、その構造はうまく働きます。XLRコネクターは、最も普及したコネクタですが、1/4ステレオヘッドフォンプラグのようなものも、同様に普及しています。規模が大きいStudioでは、ステレオフォンプラグのより小さいバージョンもあります。それは、TT(TinyTelephone)コネクターです。
さて、重大な信号ロスや干渉がなく、1000フィートもの長さのケーブルを使えるようになるバランスケーブルのコンセプトを見てみましょう。
マイクロフォンのケーブルエンドでは、2つのHotLeadが、180度の逆相信号を伝送している結果、もし、2つのHotLeadがケーブルの何処かで接続されてしまうと、音楽信号は全く聞こえなくなるでしょう。その反面、ノイズと電気的な干渉の音が聞こえるでしょう。
そのシステム補完が成立するのは、ケーブルのミキサーエンド側で、HotLeadの1つの位相が、反転されるので、HotLeadは、位相が戻ることによります。さて、それらが、合成されると、信号は聞こえるようになり、さらに、振幅が2倍になります。これは、良いことです。
HotLeadは位相が戻るという事実はさておき、ケーブルのミキサーエンド側で再び位相を転換させるというのは、どんなメリットがあるのでしょうか。
ノイズや干渉は、たとえケーブルがどれくらいの長さであっても、ケーブル全体で吸収される、そして、ノイズは、等しく吸収され、両方のHotLeadで位相が同じになるので、一方のHotLeadの位相がミキサーエンドで転換される、という興味深いことが起こります。ケーブルによって拾われたどんなノイズや干渉も、すべて打ち消しあいます。一方のHotLeadが、もう一方のLeadのノイズが持っている180度逆相であるように作られたノイズを含んでいるからです。
要約すれば、バランス構造の結果、ノイズや干渉が全体で打ち消しあい、さらに、アンバランス構造と比べて、振幅が2倍になります。
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